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相馬黒光『黙移-新装版-』(法政大学出版局/1977年) [中村彝を知るための45冊]

 1934年(昭和9)より『婦人之友』に連載されていた、新宿中村屋の相馬良(黒光)のエッセイをまとめたのが本書です。1938年(昭和13)に、女性時代社から単行本が出版されたのを皮切りに、戦後は東和社、ほるぷ、郷土出版社、法政大学出版、日本図書センター、平凡社など数多くの出版社より、増補版や改訂版、新装版が刊行されました。新宿中村屋と中村彝をめぐるさまざまなエピソードに関する、一方の当事者からの記録です。黒光自身の経歴や明治女学校時代の思い出、興味のある文学分野の記述が多い中で、彜との関わりは「美術家との交わり」、「ロシア文学の研究」、「早逝したる桂井當之助氏」、「俊子をめぐりて」、「エ氏の日本退去」など随所に登場します。ただし、多くの作家たちとの交流に比べて、彝の記述は相対的に少なくなっています。本書で初めて、黒光自身により「オカーサンは悪党だ、埒のそばまで人を引き寄せておいて、その内には一歩も踏み入らせないやり方だ」という、彝の有名な言葉が紹介されています。
 現在、いずれの出版社からの『黙移』も絶版となっているようです。ただし、古書店や古本ネット通販では、容易に入手できます。また、数多くの出版社から刊行されていますので、全国どこの図書館でもたいていは収蔵されており、手軽に閲覧することができます。

写真は、1977年に法政大学出版より刊行された相馬黒光『黙移~明治・大正文学史回想~』。


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