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北原義雄・編『中村彝画集』(アトリエ社/1927年) [中村彝を知るための45冊]

中村彝画集1927函.jpg 中村彝画集1927表紙.jpg

 1927年(昭和2)にアトリエ社から出版された、北原義雄・編の『中村彝画集』です。前年の1926年(大正15)に出版された『芸術の無限感』Click!(岩波書店)とともに、伊藤隆三郎、堀進二、遠山五郎、渡辺光徳、鶴田吾郎、前田慶蔵、洲崎義郎の7人が集まって刊行した豪華な『中村彝作品集』(中村彝作品集刊行会)の普及版として企画されたものと思われます。カラーグラビア印刷が10作品、モノクロが16作品収録された、当時としては上質な印刷の画集です。序文を鶴田吾郎が担当し、奥付には「中村画室倶楽部」の版権印が押されています。この画集が貴重なのは、戦後に行方不明となってしまった作品、あるいは戦災で焼けてしまった作品の画像が収録されており、いまやかけがえのない資料となっています。特に、新宿中村屋のショーウィンドウに飾られていて、1945年(昭和20)5月25日の山手空襲で焼けてしまった『曇れる朝』(1909年)や、中村彝アトリエの一隅を写生した作品、いまでは見られないモデルのデッサン(『女の像』)など、この画集に残された貴重な画像です。
 現在でも、古書店では比較的入手が容易です。特に1927年(昭和2)版よりも、重版の1931年(昭和6)版のほうが廉価で手に入りやすくなっています。また、一般的な図書館に置かれているケースは皆無に近く、美術館系の資料室などには収蔵されている可能性があります。

写真は、1927年(昭和2)版の画集の函(左)と表紙(右)。


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