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曾宮一念『裾野』(四季書房/1948年) [中村彝を知るための45冊]

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 おもに戦前戦中を通じて書きためておいた曾宮一念のエッセイを集め、戦後すぐの1948年(昭和23)に四季書房から出版された画文集『裾野』です。本書では、巻末に近い「故友を思ふ」の章に中村彝についての想い出が多く登場しています。彝のパトロンのひとりであった今村繁三が、大正初期に開催した「牛鍋会」で曾宮と彝は初めて出会いますが、ここでは曾宮から見た彝の性格や精神生活の推移・変化について、それらエピソードとともに触れられています。のちに、彝自身が自分の性格について鼻っぱしが強く傲慢だったと周囲の友人へ述懐していますが、結核の病状が進むにつれて性格が少しずつ穏やかになり、謙虚な姿勢が増していったことが、もっとも身近にいた友人のひとりである曾宮の証言によって語られていきます。
 本書は、東京国立近代美術館のライブラリーにも収蔵されてはおらず、自治体の図書館などにも所蔵されているケースは稀です。大きな図書館では、国立国会図書館に2冊、東京都立中央図書館に1冊が収蔵されています。なお、古書店では流通しているのを見かけますが、他の曾宮一念の著作に比べて数が少ないものか、多くは残っていないようです。

写真は、曾宮一念『裾野』(四季書房)の表紙と下落合のアトリエ前に立つ曾宮一念。


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